学校区は、不動産にどんな影響があるか
不動産エージェントの桜井きゃらです。
前回、どうしてシリコンバレーの公立学区が複雑なのか、お話しました。
今回は、この公立学校区自体が、不動産にどんな影響があるのかみてみましょう。
その1:シリコンバレーの公立学校は、学校区内の固定資産税が収入源。
シリコンバレーの公立学校区(School Districts)は地方自治体や市町村の一部ではなく、独立した特殊法人である、と前回お話しました。
私立の学校と違って、こちらでは、公立の小中高校は、すべて学費が無料です。
外国から来た移民でも、学区内に居住すれば、その学区内の小中高校に無料で通うことができます。
では、こうした公立の学校区はどうやって運営資金を調達しているのでしょうか。
NCES (National Center for Education Statistics) の統計によると、学校区の資金源は、連邦政府から約8%、州政府から約47%、郡や市町村などの地方自治体から約45%得ています。
この資金源から見ても、アメリカ連邦政府の補助金の割合がいかに少ないかがわかります。
アメリカの公立校は、ほぼ州政府とその地元の地方自治体の税金で運営されています。
しかも、その地方自治体からの資金の約82%は、固定資産税から出ています。
例え、自分たちは学齢期の子供がいてもいなくても、その学区内に住んでいる限り、自動的に学校を補助する税金を固定資産税から引かれます。
ホームオーナーの方は、郵送されてきた固定資産税の請求書、または、オンラインの明細書のDetail of Taxesの項目をご覧になってみて下さい。
(Taxing) Agencyの項目に、Community College District (Bonds)とか School District (Elementary of Unified School Bonds)などの学校運営資金のための地方債が課税されているのがわかると思います。
課税利率は、固定資産査定額の0.01%~などわずかかもしれませんが、固定資産税の査定額が大きい地域、持ち家の率が多い学区、また自社ビルを持つ企業のある地域などでは、学校運営に使われる固定資産税も多く集まります。
学校区によっては、シリコンバレー教育財団のようなチャリティで学校運営資金を集める非営利団体を設立して、イベントを通して寄付金を集めて、学校のプログラムを充実させているところもあります。
しかし、やはり学校運営の根底となる資金源は州税や固定資産税などの地方税です。
不動産を持つということは、その学区内の公立学校もサポートしているということで、むしろ不動産の方が学区に影響をあたえている、ということになるかもしれません。
その2:学校区に関係なくシリコンバレーの不動産価値は上がっていく。
よい学区の不動産は、買い手が殺到し、競争になって不動産価格が上がる。
これが、学区が不動産にあたえる一番大きな影響で、シリコンバレーでは、何年もこうした傾向が続きました。
トップレベルの学区の不動産は、下記のような理由で、常に高い人気を保っていました。
- 他の地域よりも短期間で不動産価値が大きく上昇するので、高く売れる。
- 投資物件なら、テナント探しが楽。
- 学力レベルの高い学区は、比例して安全な環境であることが多い。
ところが、最近は、こうしたトップレベルの学区内の不動産は、逆に避けたいという買い手も増えてきました。
その理由は、
- トップの学区域にあるというだけで、家のサイズやコンディションがたいしたことなくても価格が非常に高く、学区がよいだけであまり価値を見いだせない。
- 学区内の学校に通わせたい買い手同士の競争が激しい。
- 人種構成が偏っている。(学区にもよるが、アジア系の生徒が大部分を占めるトップ校が多いのが現実。)
などです。
トップクラスの学校区でなく、10のうち7~8くらいのレベルの学校区で環境のよいところ、
あるいは、人種の偏りがなく、伸び伸びと勉強できる環境の学区、
などを希望する買い手も増えています。
そうすると、どういうことが起きるのでしょうか。
今まで、それほど、学力レベルは高くなかった地域に、子育てや教育にも関心のある家庭が移り住んでくることによって、その地域の学区の学力レベルも上がり、環境ももっとよくなる、ということがおこります。
また、学校区を全く気にしない家庭もあります。
同じ公立学校でも、マグネットスクールやチャータースクールと呼ばれる学校独自の専門性を重視した学校は、学区関係なく抽選で申込を受けていたりします。
そうすると、学区にこだわる必要がなくなります。
また、私立の学校に通わせるから公立学区は関係ない、
あるいは、アメリカでは、ホームスクーリングといって、学校へ行かず、家庭で教育する制度もあり、そうした制度を選ぶ家庭もあります。
確かにまだ、トップレベル学区内の不動産が人気なのは間違いありませんが、今後、トップレベルでなくても安全でそこそこの学力レベルの学区の人気も上がっていきそうです。
実際に、学力レベルが上昇してきている学区もありますから、学区重視で家探しをしている方は、学力レベルや環境の最新情報を調べて、不動産探しをされるとよいと思います。