それは、ワケあり物件です!— その2

不動産エージェント / ブローカーの桜井きゃらです。

 

前回のブログでは、一般の人が購入しにくい以下の3種類のワケあり物件の話をしました。

  1. BMR
  2. As-is (アズイズ)または、Fixer-Upper (フィクサーアッパー)物件
  3. 隠れた条件(訴訟中物件、抵当権等)がある物件

 

最後の隠れた条件の項目で、家の名義を確認した方がよいと申し上げました。

 

名義人が一致しないケースでは、家主が死亡して家族が売り手となっている場合、あるいはリビングトラストの名義になってTrusteeと呼ばれるトラスト管財人が売り手になっている場合などがあります。

 

では、このように、家の名義人が売り手ではない場合、何か問題があるのでしょうか。

 

 

 

4.Trust(信託) Sale

 

『これはトラストセールです。』という場合があります。

 

これはどういうことかというと、家の名義がリビングトラスト(Living Trust:生前信託)になっているということです。

 

リビングトラスト(生前信託)というのは、財産分割を明記した法的書類のことです。

 

そのリビングトラストのトラスター(Trustor:信託設定者)のうちの一人が亡くなって、あるいは、すべて設定者が亡くなった場合、実際の売り手は、生存している設定者か、管理者に指定されているトラスティー (Trustee:信託管財人) になります。

 

このリビングトラストに不動産を移し、名義をリビングトラスト名にすることで、次の項目で述べるプロベートという裁判所を通して行う財産分割を避けることができます。

 

よくあるケースは、ご夫婦でリビングトラスト(生前信託)を作成し、生存中はそれぞれがトラスター(信託設定者)とトラスティー (信託管財人)を兼任し、

万一二人とも亡くなった場合、ベネフィシャリー(Beneficiary:相続人)であり、またサクセッサートラスティー (Successor Trustee: 後任信託管財人)となる子供たちが、売り手となって、リビングトラスト名義の不動産の売却をおこなうようにしておくケースです。

 

高齢になったご両親の名義を、リビングトラスト名義にすることで、ご両親が亡くなったり、財産管理ができない状況になっても、

リビングトラストで指定されたサクセッサートラスティー (後任信託管財人)である成人した子供たちが、裁判所を通すことなく普通の不動産売却と同様に物件を売ることができます。

 

ただし、売り手であるサクセッサートラスティー (後任信託管財人)がその物件に長い間住んでいなかったために、

物件の詳しい情報を提供できなかったり

そこに住んでいたトラスター(信託設定者)がその家で (たいていは老衰などの自然死ですが)亡くなったりという、

場合も多くあります。

 

そういう点では、普通の不動産売却として進められるものの、上記の点が気になる買い手には、トラストセールはあまり好まれない場合もあります。

 

ただ、物件自体に問題がなければ、現在のような売り手市場では、普通に高値で売れていきます

 

 

 

5.プロベート (Probate:裁判所による遺産検認分割:)セール

 

ではプロベートセールとは何でしょう?

 

通常、遺言書をきちんと残しておけば、売主が亡くなっても遺言状で指定された相続人が不動産売却できるのではないか、とお考えになる方も多いと思います。

しかし、アメリカでは、遺言書(Will)を残していても、不動産の名義人が死亡した場合は、プロベートという裁判所による遺産検認分割作業によって、遺言状や相続人を検認しないと、不動産売却ができません。

 

プロベートを通さないと不動産売却ができない場合、プロベート費用を裁判所や弁護士に支払らわなければならず、遺族には大きな負担となります。

 

カリフォルニア州では、不動産売買が通常の売買のように勧められる簡易なプロベートと、裁判所がオークションを行わせるような形での公式なプロベートの2種類があります。

 

簡易なプロベートですませるためには、プロベートの管財人 (たいていは弁護士) が裁判所から全面委任(Full Authorization)を認可されなければなりません。

 

この方法で不動産を売り出した場合、すべての相続人が売値を確認して裁判所の許可が得られれば通常と同じ過程で不動産売買を進められます。

 

しかし、もし公式なプロベートを通して売却しなければならない場合、制限付き委任を受けた管財人がすべて裁判所の認可を受けて進めなければなりません。

 

この場合、買い手からオファーが来ても、すぐに返事をすることはできず、特定の日に裁判所で公聴会を開き、他の買い手にもオークションのように競り合わせて、高いオファーを出させ、裁判所が最終的に認可した買い手が購入できます。

 

そのため、このような公式なプロベートセールの物件は、オファーを提出しても、結果が出るまで時間がかかります。

 

さらに、他に買い手がいれば、そこからまた競争で競り合わなければならないような状況になります。

 

そのため、プロベートセールは、管財人が全面委任(Full Authorization)を認可されているのか、制限付委任(Limited Authorization)だけなのか、によって、一般の人も買える物件か、不動産投資に慣れている買い手でないと難しい物件となってしまいます。

 

売却の場合はこういう情報をどのように出したらよいか、購入の場合はこういう情報をどう入手したらよいか、確認されるのがよいと思います。

 

 

6. 事故物件 

 

最後に、いわゆる事故物件と言われる物件についてお話しましょう。

 

カリフォルニア州の不動産法では、その売り出し中の建物内で3年以内に誰かが死亡している場合は、ディスクロージャーズ(Disclosures)と呼ばれる、売り手が公表しなければならない書類に明記公表することが義務づけられています。

 

たいていは、老衰や自然死でおだやかに亡くなられたというケースです。

 

たとえ物件自体に何も問題がなくても、人によっては、誰かが建物内で亡くなった家を購入するのは気が引ける、という方もいます。

 

「自然死だったら、気にしません。」

 

という方が多いのですが、では、自然死でなければどうでしょうか

 


 

以前、自ら命を絶たれた方のご自宅プロベートセールで売却した時は、大変気を使いました。

 

とてもきれいに直して、ペンキを明るく塗り替え、玄関にはカラフルな花の大きな鉢植えを飾り、価格も市場価格より少し安めに売り出しました。

 

そのため、たくさんの買い手がオープンハウスに訪れ、週末は満員御礼状態でした。

 

興味を持たれた買い手側エージェントからの問い合わせがたくさん来ましたが、

「Disclosuresをよく読んで、それでも興味があったらまた問い合わせて下さい。」と伝えました。

 

すると、Disclosuresに書いてある『プロベートセールで、しかも建物内で家主が死亡』という情報を見たエージェントから、よく質問が来ました。

 

「自然死ですか?」

 

「いいえ」

 

「病死か事故死?」

 

「いいえ」

 

とそこまで言うと、OK, Thank youと話をきって、もう連絡してこないエージェントがほとんどでした。

 

不動産エージェントとしてウソをつくことはできません

 

しかし、本当のことを言うと、熱が冷めたようにひいていく買い手が多かったのが事実です。

 

同僚のエージェントからも、そういう物件はなかなか売れないよ、と注意されていました。

 

しかし、亡くなられた家主の方や遺族の方のためにも、最善を尽くしてこの家を売るのが自分の使命だと腹をくくって、きれいにステージングをほどこし、家のすばらしさをアピールしました。

 

幸い、若いアジア系アメリカ人のカップルが、すべてを了解した上で購入してくれました。

 

家を買うのが初めてという二人は、これも縁があったのだと思って、快く家を購入してくれました。

 

購入完了日には、その買い手に、感謝の言葉を示したカードと、何か質問があったらいつでも連絡して下さい、と私の連絡先をその家に置いておきました。

 

すると、購入後しばらくして、その買い手から、質問の電話がかかってきました。

 

「クローズの時に全部支払ったのに、何か請求書のようなものが来たのだけれど、これはどういうこと?」

 

彼女がテキストメッセージと一緒に送ってきた写真を見ると、それは不動産登記の譲渡証書でした。

 

初めて家を購入した二人は、登記書類を初めて見たため何かの請求書と見間違えたのでした。

 

「これは請求書ではなく、あなたたちが新しいオーナーになったという証明書だから請求書ではありませんよ。」

 

と伝えると彼女は、ほっとした様子でした。

 

「その家は、どう?引っ越ししてもう落ち着ついた?」

 

と私が尋ねると、

 

ええ、とっても快適よ!これから古い暖房機器を新しいのと入れ替える予定なの。」

 

明るく楽しそうな彼女の声を聞いて、この家が新しいオーナーを迎えて生き生きとよみがえった様子がうかがえました。

 

家というのは、人が入って暮らすことで、また新しい『家』として機能しはじめます

 

新しい家主がこの家を楽しんでいる様子がうかがえて、亡くなられた元の家主の方への責任を果たせたような気がして、本当にうれしく思いました。

 


 

 

 

中古物件は一軒一軒、形やレイアウトが異なるだけでなく、それぞれ様々な歴史や条件、隠れた情報があります。

 

中には、殺人事件があって、事件現場のベッドルームをきれいに処理して売り出す物件もあります。

 

ニュースで事件が報道されたそんな物件でも、シリコンバレーでは普通に市場価格で売れてしまいます。

 

法律的、金銭的に購入が難しい物件とちがって心理的要素が影響する物件は、家自体を買い手が気に入れば、買える物件であり、売れる物件です。

 

こうした様々な情報を手に入れると、どうしてそれが格安物件なのか、よくわかると思います。

 

ワケアリ物件を売るにしても買うにしても、正しい情報分析とその対応策が必要になってきます。

 

インターネットで見る物件情報には、こうした情報が表に出ない場合が多いので、どうぞご注意下さい。

 

 

 

 

 

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