本物のハードウッドフロアを見分けられますか?
不動産ブローカーの桜井きゃらです。
家を売りたいというお客様に、まず聞かれるのが、
『どうしたら、この家を売れるでしょうか。』
という質問。
売るために、家の価値を上げるにはどうしたらいいでしょう、ということですね。
では、いったい、どこをどうすれば、一番家の価値が上がるのでしょうか。
もちろん、キッチンやバスルームをアップグレードしたり、と、あらゆる部分にお金と時間をかければ、家の価値は上がります。
しかし、たくさん投資した分相応に家が高く売れるかというと、必ずしもそうとは限りません。
それよりも、特定の部分に効果的な投資をすることで、十分、家の価値を上げることができます。
例えば、家の価値を上げる部分の一つが、床です。
オープンハウスで家を見に行って、古いしみだらけのカーペットが床一面に広がっていたら、やはり買い手は引いてしまいますよね。
床をフローリングに替えてモダンにするだけで、家の中の雰囲気もガラッと変わります。
日本では、単にフローリングと言っている床素材。
フローリングというとすべて木製と思ったら、実際は本物の木でできたハードウッドから、すべて合成製品でできているSPC や Vinylフロアなど、様々な素材が出回っています。
見た目はまったく一緒にみえる床素材。
果たして、あなたは本物の木でできたハードウッドフロアを見分けることができるでしょうか?
今回は、こうした床素材についてお話しましょう。
床素材の種類
一般的に大きく床素材を分けると、硬質の床素材(フローリング、タイル、リノリウム、大理石等の石、竹等)と柔らかい床素材(カーペット、コルク、(日本国内なら)畳など)があります。
このうち、よく使われる最近人気の床がフローリングです。
日本では、ハードウッドフローリングやラミネートフローリングをすべてフローリングと呼んでいるようですが、フローリング(Flooring)と英語で言うと、ただの床素材です。
米国では、ハードウッドフローリング、ラミネートフローリング等々、素材別に呼んでいます。
写真だけでで見ると、皆同じ木製の床のように思えます。
今回は、これらの違いについて説明しましょう。
1. ラミネートフローリング(Laminate Flooring)
最近、よく耳にするのが、ラミネートフローリング。
オープンハウスで、家を見に行って、新しいフローリングが張ってある場合、大抵、ラミネートフローリングを使っています。
ラミネートフローリングとは、高密度で圧縮した木材チップの合板を基材として、表面にさまざまな色合いの木目を印刷した樹脂紙を貼った合成のフローリングです。
見た目は、ほとんど本物の木材と変わらない上、最近はさらに木肌のような凹凸があったり、木の節目が印刷されたり、と限りなく本物の木材に近いデザインが出回っています。ラミネートフローリングの特徴は以下の通りです。
<長所>
- 手入れが楽で、耐久性がある。
- 価格が手ごろ。本物のハードウッドの3~4分の1で購入することができます。
- 色やデザインが豊富。
- 15~25年くらいの耐久性があるといわれる。
<短所>
- 湿気に比較的弱い。基材は木材チップでできているため湿気でわずかに膨張する可能性あり。
- キズやへこみがつくと、本物の木材のように研磨して修復などができない。
本物の木と比べて、価格も手ごろで、見た目もきれいなラミネートフローリングは、手入れも楽なので、床をアップグレードしたい場合、よく使われます。
特に、リビングルームやベッドルームなどの床に、ラミネートフローリングは向いています。
ただし、バスルームやキッチンなど水が飛び散る可能性の場所には、あまりむいていません。
もし、バスルーム、キッチンの床に湿気に強いフローリングを入れたければ、次にあげるSPCフローリングがおすすめです。
2. SPCフローリング(Stone Polymer/Plastic Composite Flooring)
最近、ラミネートフローリングに匹敵する勢いで人気なのが、SPCフローリングです。
SPCフローリングのSPCは、Stone Polymer (もしくはPlastic) Compositeの省略です。
その名の通り、石の粉、天然石パウダーを基材に使い、表面に木目を印刷した塩化ビニールシートを貼った、硬質な床素材です。
その特徴は以下の通りです。
<長所>
- 防水性、耐熱性に優れている。
- 熱に強いので、床暖房の上にもインストールできる。
- 価格が手ごろ。ラミネートフローリングとあまり変わらない。
- 色やデザインが豊富
- 硬質で、伸縮が起こりにくいので、浮きや反りなどの歪みが起こりにくい。
- 15~25年くらいの耐久性があるといわれる。
<短所>
- キズやへこみがつくと、本物の木材のように研磨して修復などができない。基材は非常に耐久性があるが、表面の層がきずつく。
- ラミネートフローリングに比べ、厚みがなく、薄い。
- 硬質で、肌触りも冷たい。
SPCフローリングは、水回りの床だけでなく、リビングルームや階段など、どこでも使用できます。
キッチンからリビングルームや廊下まで、統一感を出したい場合、水や湿気による傷みを気にしないよう、SPCフローリングで統一する、なども可能です。
3. LVPフローリング(LVP Flooring)
SPCフローリングと共に、省略アルファベット文字で出てくる床素材が、LVP フローリング。
LVP フローリングのLVPとは、Luxury vinyl plankの省略です。
LVT フローリングというのもあり、そのLVTとは、Luxury vinyl Tileの省略です。
どちらもVinyl(ビニール)を素材としています。
ビニールというとぺらぺらのビニール袋や薄いビニールシートなどを想像してしまいますね。
しかし、Vinylは英語発音では『バイナル』。
実際には、日本語の『ビニール袋』や『レジ袋』は英語では『Plastic bag』。
米国のスーパーで、「Paper or Plastic?」と聞かれたら、「紙袋かビニール袋どちら?」という意味。
逆に、こちらでは、Vinyl(バイナル/ビニール)というと、塩化ビニル樹脂や硬質のプラスティックを指す場合が多いです。
Vinyl window(バイナル ウィンドウ)というとPVC(塩化ビニル)プラスティクの枠でできた窓のこと。
Luxury vinyl plankは、硬質の塩化ビニルを基材として、塩化ビニルの層で作られています。
<長所>
- SPCフローリングに比較して、柔らかく、吸音性が少しある。
- 衝撃に強い
- 価格が手ごろ。
- 防水性、耐熱性に優れている。
- 高級なものは、25~30年くらいの耐久性があるといわれる。
<短所>
- キズやへこみがつくと、本物の木材のように研磨して修復などができない。基材は非常に耐久性があるが、表面の層がきずつく。
- 他のはめ込み式フローリングと異なり、接着剤で貼るので、あとからはがしにくい。
水に強くメインテナンスが楽で、SPCほど硬くなく、踏み心地がいい素材がよければ、LVPフローリングがよいかもしれません。
4. エンジニアードハードウッドフローリング(Engineered Hardwood Flooring)
エンジニアードハードウッドフローリングとは、日本では、複合 (合板) フローリングと呼ばれ、複数の合板を接着剤で張り合わせた合板の表面に、天然木の薄板を張りつけたフローリングです。
すべて木材でできているので、見た目は、全く一枚板のハードウッドフローリングと見分けがつきません。
どんな長所、短所があるかというと
<長所>
- キズや汚れに比較的強く、反りや割れが生じにくい。
- 品質や仕上がりが均一でインストールが比較的簡単。
- メンテナンスが楽。
- 種類やデザインが豊富。
- 本物のハードウッドフローリングよりも、少し安い。
- 20~40年くらいの耐久性があるといわれる。
<短所>
- 他の合成フローリングよりも2倍くらい価格が高い。
- 深いきずがつくと、中の合板が見えて、本物の一枚板のように修復できない。
- 本物の一枚板に比べると、硬質で、木の質感があまり感じられないものもある。
天然木のフローリングは高くて、メンテナンスが大変だけれど、木の風合いが欲しい場合には、エンジニアードハードウッドフローリングが手ごろかもしれません。
5. ハードウッドフローリング(Hardwood Flooring)
さて、最後に、ハードウッドフローリングとは?
その名の通り、天然木から切り出した一枚板の無垢材でできた床材で、日本では、無垢フローリングと呼ばれているようです。
メープル材、パイン材、ウォルナット材、ヒノキ材、オーク材など、木材によって様々な色や風合いがあります。
<長所>
- 木の温かみや肌触り、素材の質感がよい。
- 時間がたつごとに、色合いが変化して風格や味わいが増す。
- 湿度が高い時は水分を吸い、低い時は水分を放出する調湿効果がある。
- 30~100年くらいの耐久性があるといわれる。
- リフィニッシュ (Refinish) と呼ばれる、研磨して上塗りする修復作業をすれば、非常に長持ちする。
<短所>
- 他の合成フローリングよりも3倍くらい価格が高い。
- 水や熱に弱い。
- 伸縮・膨張・反り・割れが起こりやすい。
- 定期的なメンテナンスが必要。
- 自然素材なので、品質が一定しない。
サンフランシスコ・ベイエリアで1960年代以前に建てられた一軒家に、本物の無垢フローリングを使っている物件がよくあります。
中には、古いカーペットを剝がしたら、その下は天然木の無垢フローリングだった、ということもあります。
これは、70年代に、ハードウッドフローリングより、少し毛足の長いシャギーカーペットの方がモダンでおしゃれ、しかも足音が静かということで人気になり、無垢フローリングの上にカーペットをインストールした家もあったためです。
1950年代に建てられたLos Gatosの一軒家を購入したお客様が、その家の床一面に敷かれた古いカーペットをラミネートフローリングに変えようとして、コントラクターがカーペットを剥がし始めたところ、下から本物の無垢フローリングが出てきてびっくり。
慌てて、工事を中止。
代わりに、ハードウッドフローリングのリフィニッシュ専門業者に依頼して、傷んだ木の床を修復してもらったケースもあります。
6. ハードウッドの修復(Hardwood Refinishing)
ご参考までに。傷んでしまった天然木の無垢フローリングがどれほどきれいに修復されるか、実際の例をご覧にいれましょう。
1. こちらのお宅は、1940年代に建てられた一軒家で、床はすべて無垢フローリング。
水に弱いのに、キッチンまで天然木のフローリングでした。
そのため、シンクの前の敷物をとったら、いつの間にか、水により床の表面がすっかり傷んでいました。
2. そこで、まず、機械を使って、木の板の表面を研磨します。
3. その後、専用の塗料で表面をコーティングして光沢を取り戻します。
こうして修復した本物の無垢フローリングは新品同様。
しかも、新しいフローリングをインストールするより、ずっと安上がりです。
別の売り手さんのお宅で、ペットのワンちゃんが、あちこちにシミを作って、臭いと傷みがひどかった無垢フローリングがありました。
しかしこうしたリフィニッシングという修復作業で研磨後、濃いめの塗料を塗ることで、シミも全くわからなくなり、臭いも塗料のにおいで消されてしまい、無事、高く売れた物件もあります。
結論
フローリングの素材そのものだけでなく、幅や厚み、色や肌触りなど、同じ素材でもたくさん種類があります。
素材を選ぶ時は、オンラインや写真で見るだけでなく、実際にお店でサンプルを見て、肌触りも確認されることをおすすめします。
オープンハウスなどで、本物の無垢フローリングを見分けるコツは、触ってみるのが一番。
もし、フローリング一枚一枚が、小さい釘で留められていたら、大体、本物のハードウッドフローリングです。
今後、技術の向上により、きっと新たな床素材も開発されるに違いありませんが、それぞれの素材の特徴をよく理解して、ニーズに合わせて選択されるとよいと思います。
今回は、おおまかにフローリング床素材の説明をしましたが、家の価値を上げるために、すべてフローリングにしなければならないわけではありません。
各家の構造やデザインスタイル、あるいは家の場所などによって、どの部分を直せば、最大限の効果があるか、かわってきますので、専門家に相談なさってみてくださいね。