それは、ワケあり物件です!— その1
不動産エージェント・ブローカーの桜井きゃらです。
昨年末からの売り手市場はますます過熱して、リスト価格より10~30万ドル以上も高い価格で競り落とされて、1週間前後で物件が売れていくような、信じられない状況が続いています。
一軒に20件ものオファーが殺到して、価格が吊り上がっていくのを何度も目の当たりにすると、なんとか格安物件を見つけられないものか、と考えてしまうのも当然です。
人気のある地域やよい学校区で、市場価格よりもかなり安い物件が出ると、これはお買い得物件かもしれない、と飛びついてしまいそうになりますよね。
しかし、ご注意ください。
どうしてそんなに安いのか、表には出てこない情報を調べないと、本当の理由はわかりません。
調べてみると、やっぱり買える物件ではなかったとわかって、がっかりすることがよくあります。
売り手が価格を設定する場合は、市場価格と諸条件を考慮して調整します。
通常、市場価格よりぐっと安い物件には、それなりの理由があります。
では、こうしたワケあり物件の裏にはどんなワケが隠れているのでしょうか。
今回はワケあり物件についてお話します。
1.BMR
写真を見てもとてもきれいで、よいコンディションなのに、市価よりも非常に安く売りだされている、
こんな物件はBMRであることがよくあります。
では、BMRとは何でしょう?
Below Market Rateの省略で、中低所得層用住宅のことです。
Below Market Rate Housing Programというのは、各市で運営しているプログラムで、条件を満たした買い手のみ購入できる物件です。
しかも、このプログラムに指定されている物件は何年たっても、市場価格で販売することはできません。
例え、10年前に買って、周りの物件が2倍の価格まで値上がりしていても、BMRの物件は10年前とほとんど変わらない価格でしか売ることができないのです。
そのため、BMRの物件は、投資としての価値はほとんど期待できません。
また、購入できる資格は、収入が一定以下であること、初めて家を購入する人であること、など市によって細かい規定があります。
基本的にBMR物件は、初めて家を購入する人で、市場価格の物件を購入するのが難しい中低所得層の人を対象としており、購入資格を認定されるためには、各市に申請しなければなりません。
例えば、キャンベル市では、市内に勤務することを条件として、BMRは市役所職員や公立学校の教員への住宅補助のような目的を果たしています。
そのため、よい物件で市価の半額近い破格のリスト価格だとしても、購入資格がない、あるいは、将来的に投資価値もあまりない、という理由で、購入は難しい物件だといえます。
ご参考までに、いくつかの市のBMRのリンクをコピーいたします。
2.Fixer-Upper (フィクサーアッパー)物件
次によくある格安物件は、古くて傷んだまま売り出されているFixer-Upper (フィクサーアッパー)と呼ばれる物件です。
これは、売主が修理やリモデルはしないでそのまま売り出しているため、修理・リモデル代金を差し引いて売るような形で安くなっています。
買い手がご自由に直してください、というわけです。
かなり大きな敷地でぼろぼろの家を市場価格より安く売っている場合、リモデルするつもりであれば、お買い得物件です。
ただし、ここで気をつけなければいけないのは、こうした物件の購入は、購入全額の現金がないと買えない場合が多いことです。
その理由は、直さないと住めないほど傷んだ物件には、ローンがおりない場合が多いからです。
ローンというのは、借り手だけでなく、物件もローンを貸すに値する物件かどうか査定されます。
もし物件があまりにも傷んでいてローン額に見合う価値がない場合、金融機関はローンを貸し出してくれません。
そのため、こうしたフィクサーアッパー物件は、現金が十分にある投資家や建築関係者がすべて現金で購入して、自分たちでリモデルする、という条件で買われていくのが、ほとんどです。
残念ながら、ローンでの購入を考えている方向けではないと思った方がよいでしょう。
たとえ、十分現金の手持ちがあっても、シリコンバレーの地価が上昇を続けているため、フィクサーアッパー物件でさえ、決して安くない価格で取引される場合もありますので、ご注意ください。
3.隠れた条件(訴訟中物件、抵当権等)がある物件
便利なところにある、きれいなタウンハウスなのに、妙に価格が安い、という場合、もしかして、そのタウンハウスは訴訟中などの問題を抱えている物件かもしれません。
例えば、タウンハウスを建設した建築会社の手抜き工事でバルコニーに不備が出てきたため、HOA(管理組合)が建築会社を訴えて損害賠償を請求している、という状況でタウンハウスが売りに出た場合、ローンを借りるのが難しくなる場合があります。
訴訟中ということは、裁判費用がかかります。
もし、敗訴した場合は、賠償金をとれずにHOA 費用からの出費が出ます。
逆に相手から賠償請求されて、費用がかさむということもありえます。
そうすると、各住民が支払っているHOA(管理組合)費が値上がりする、あるいは緊急の訴訟費用徴収などということもおこるかもしれません。
ローンを貸し出す金融機関としては、リスクが高くなるために、訴訟がある物件には、ローンを認可しない場合があります。
中には、こうした係争中の物件のローンを専門に扱っている金融機関もありますが、リスクが高い分、利息も高い場合が多いです。
一軒家ならこういうケースは少ないものの、必ず物件の名義、所有権、抵当権等に問題がないか確認しましょう。
名義人とは別な人物が売り手になっている場合、売り手は正式に認められた人物なのか、固定資産税やHOA費が滞納されていいないか、その他、リモデルしたコントラクターへの支払滞納などの負債が抵当となって物件に抵当権が設定されていないか、などを確認されるとよいでしょう。
名義人が一致しないケースでは、家主が死亡して家族が売り手となっている場合、あるいはリビングトラストの名義になってTrusteeと呼ばれるトラスト管財人が売り手になっている場合などがあります。
名義人と売り手が異なる場合のケースは、少々複雑なので、また次回説明いたします。
~続く~