シリコンバレーの不動産は、老後の資金源になる
不動産エージェントの桜井きゃらです。
マリーとローリーという仲の良い二人は、1950年代に生まれたベービーブーマーの世代。
二人とも、19才で妊娠、20才で出産。シングルマザーとして男の子と女の子をそれぞれ育てます。
マリーは、引っ越し癖があり、仕事やボーイフレンドが変わるたび、息子を連れて別な賃貸物件へ引っ越す生活を続けていました。
ローリーは、幼い娘をあずけて、ニューヨークで株のブローカーの仕事を見つけてお金を貯め、アイダホに家を買いました。
彼女はアイダホの家を貸出し、それを担保にまた家を買いました。
カリフォルニアにも家を買ったローリーは、仕事を辞めて、家賃収入で暮らす生活を始めました。
一方、マリーは、レントコントロールがあるから大丈夫、とサンフランシスコのフラットの2階を借りていました。
しかし、そこが火事になり、別なアパートを探さなければならなくなりました。
ここなら大丈夫と思って借りていたコンドミニアムのオーナーが、売りに出すから出てくれ、と言ってきたため、マリーは再び、必死にアパートを探します。
しかし、60才を過ぎて、わずかな収入と年金暮らしのマリーには手が出ないほど、サンフランシスコのアパートの家賃は値上がりしてしまいました。
サンフランシスコだけでなく、シリコンバレー、ベイエリア全体で、家賃は高騰して手が出ないため、マリーはもっと郊外の家賃の安い地域へ都落ちしなければなりませんでした。
二人は、今、70代を迎えて、人生を振り返る地点にいます。
同じような青春を送った仲良しの二人が、不動産を早いうちに購入したかしないかで、老後の生活が変わりました。
若いころは、二人とも、不動産は高すぎて、購入するのは難しい、と考えていました。
しかし、ローリーは、様々なローンや不動産プログラムを利用して、不動産購入に踏み切り、老後の安定を手に入れました。
では、不動産が、どのように、老後の資金源になるのか、みてみましょう。
その1:持ち家なら、家賃収入をとることができる。
すでに自宅がある人なら、もちろん賃貸物件として貸すことができます。
もし自宅として住んでいるので、賃貸にはできない場合でも、自宅の空いている一部屋だけを貸すことも可能になっています。
あるいは、短期のホテル代わりのように、部屋だけを貸すということも、はやっています。
シリコンバレーのような家賃が高い場所では、ルームシェアや短期・長期賃貸を求める学生や単身赴任者がたくさん集まります。
不動産を所有してれば、万一働けなくなっても、いざとなれば、様々な形で家賃収入を得ることが可能です。
老後のことを考えると、たとえ家族や友人と所有権を共有するTenancy in Commonのような形でも不動産を購入しておくのは、保険に近い、安心を保証してくれるようなものかもしれません。
その2:ADUを建てて、家賃収入を増やすことができる。
シリコンバレーに一軒家を持っている人が、最近興味を持っているのが、ADUです。
ADUとはAccessory Dwelling Unitsの略。
日本語でいう“離れ家”のことです。
同じ敷地内の裏庭に、こうした離れ家を建てることで、別な投資物件を購入しなくても、離れをまるごと賃貸物件にできます。
今までは、ADUの建築基準が厳しく、一定の条件を満たしていないと、ある程度のADUが建てられませんでした。
しかし、慢性的な家不足のため、最近は、地方自治体が基準を緩めて、逆にADU建設を促進する方向を打ち出してきました。
例えば、サンノゼ市は、市民への集会やパンフレットなどで、基準改正の告知を広めています。
ADUには、キッチン、トイレ、暖房など人が居住できる最低限の設備が整っていなければなりませんが、ジュニアADUというカテゴリーもあって、トイレは母屋と共有で、というものもあります。
こうしたADUは、賃貸だけでなく、二世帯住宅として、家族で暮らすのも、経済的かもしれません。
その3:持ち家を担保にしたホームイクィティローン、HELOCがある。
日本では、あまりなじみがないかもしれませんが、中古住宅の流通が当たり前で、中古住宅の価値が上がっていくアメリカでは、不動産を担保にローンを引き出すことができます。
ホームイクィティローンというのは、物件の評価額から住宅ローン等の借入残高を差し引いた残りの部分(エクイティ)の価値に対して融資を受けられる住宅担保ローンのことです。
例えば、$700,000で買った家が値上がりして、市場価値が$1,000,000なっていたとしたら、まだローンが$600,000残っていたとしても、ローン額を差し引いた$400,000の価値に対して融資を受けられるシステムです。
ただし、個人のクレジットスコア等によって融資額は変わってきますので、ローンオフィサーとの確認が必要です。
これと似た住宅担保ローンとしてHELOCというのがあります。これは、同じような融資枠を設定してもらい、クレジットカードのようにいつでも引き出しい時にその上限まで借りられるローンです。
HELOCの融資枠を緊急用に作ってもらって、使わなくても大丈夫です。
急に資金が必要になりそうな時などは、便利なシステムです。
年々地価が上がって物件の価値も上がっていくシリコンバレーでは、こうした住宅担保ローンで資金を調達することが可能です。
その4:ダウンサイズして、小さめの家に移り、利益を得る。
どうしてもお金が必要になったら、
借りている家からお金を引き出すことはできませんが、自分の持ち家だったら売ることができます。
もし、自宅購入から何年かたっていて、家のイクイティと呼ばれる資産価値が上昇していて、住宅ローンの残高も少なくなっている場合は、結構な売却金が手に入るかもしれません。
それを元に、もう少し安めの家に買い替えるということも可能です。
よくあるのは、子供たちが大人になって巣立っていったあと、広すぎる家の管理が大変だから、もっとこじんまりとした家に移り住みたい、というご希望。
いくら売却金が入ったとしても、新居にかかる固定資産税が市場価格で査定されるため、大きな負担になる、と気になる方もいるかもしれません。
もし、あなたが55才以上で、昔に買った自宅の固定資産税が安い場合は、同等かそれより価値の低い家に買い替えた場合、カリフォルニア州では、その現在の固定資産税率をそのまま引き継ぐことができます。
カリフォルニア州では、固定資産税の税率は、年に2%を超えない範囲で査定されます。
ただし、売却、購入で、持ち主がかわった時は、固定資産税は、その購入額を元に再査定されます。
固定資産税は、通常、購入価格、つまり、その時点の市場価格の約1.25%と計算します。
もし、$1,000,000 (100万ドル) で家を購入したとすると、大体、その年の固定資産税は、1.25%の$12,500 (1万2千500ドル)となります。
ある人が、自宅を40年前に、$100,000 (10万ドル)で購入していて、今年は、固定資産税を$2250と査定されたとします。
その自宅は、現在の市場価格の、$1,000,000 (100万ドル)で売れたとします。
そして、新しく、同じ価格、$1,000,000 (100万ドル)で同じ地域に別な家を買ったとします。
本来ならば、購入価格の1.25%の$12,500 (1万2千500ドル)の固定資産税の請求が来るはずですが、その人は55才をすぎていたので、前の家の固定資産税率をそのまま引きつぐことができました。
そのため、固定資産税を$12,500 (1万2千500ドル)ではなく、$2250に2%以下の上昇率を加えた額ですむことになります。
ただし、自宅を売却してから、2年以内に次の物件を購入しなければならない、などの条件もありますので、ご注意下さい。
売却した額よりも、安い物件を購入することで、差額の売上金を手に入れることができ、固定資産税も大きく増えることなく、生活資金の計画がたてられます。
また、年齢に関係なく、自宅売却の場合は、単身者で$250,000、夫婦で$500,000の譲渡所得税控除が受けられます。
住んでいる間も、住宅ローンがあれば、利息を$750,000分まで税金控除できますし、支払った固定資産税も州税から、個人の税率の割合に応じて控除できます。
長年住んでいるだけで、自宅の資産価値が上がって、現金が手に入ると考えると、老後も安心ですよね。