Electrification

シリコンバレーで加速する「住宅電化(Electrification)」最新事情

 

不動産ブローカーの桜井きゃらです。

 

ガス式給湯器が古くなって、そろそろ買い替え時、もう少し使ってから新しくしよう、などと考えていたら、カリフォルニア州では、ガス式給湯器は、もう買えなくなるかもしれません。

 

えっ、どういうこと?と驚かれる方も多いと思います。

 

何十年もガス式給湯器、ガス式セントラルヒーター、ガスレンジと普通に使っていたのに、買い替えようと思ったら、すべて電気式の製品しか買えない、設置できないとは!

 

そんな日がすぐそこまで来ています。

 

Zero-NOx emissions「窒素酸化物(NOx)の排出ゼロ」を目標に掲げるカリフォルニア州、特にベイエリアでは、今後、建物の電気化がますます進みます。

 

今回は、住宅の「脱炭素・電化(Electrification)」をめぐる最新動向について、わかりやすく解説します。

 

1.家電設備の現状と電化の背景~なぜガス禁止?

 

実は、集合住宅のコンドミニアムやタウンハウスでは、最初からガスを使用していない物件も多いです。

 

集合住宅にガスが通っていない理由は、ガス管を配管せず電気工事だけの方が建築コストが安く、またガス漏れ事故防止などの安全面でもすぐれているからです。

 

一方で、昔に建てられた一般住宅では、電気代より天然ガスの料金の方が安いため、ほとんどガス式家電製品を使用しています。

 

ところが、近年、カリフォルニア州では、窒素酸化物(NOx)による光化学スモッグ、酸性雨、オゾン層破壊など、環境や人体への有害な影響を防止するため、窒素酸化物排出の元となるガス式家電製品の禁止や制限の動きが進んでいます。

 

<バークレーのガス禁止令をめぐる動き>

 

カリフォルニア州バークレー市は 2019年、新築建物における天然ガス配管の新設を禁止する条例を全米で初めて制定しました。

 

これはガス機器を直接禁止するのではなく、配管そのものを敷設不可にすることで「事実上ガス機器が使えない」状態を作るものでした。

 

これに対してカリフォルニア州レストラン協会(California Restaurant Association)が反発。

 

レストランの調理ではガス火力が不可欠で、電化はコスト増と調理の質の低下を招くとして、バークレー市を訴える訴訟を起こしました。

 

結局2023年にバークレー市が敗訴。

California Restaurant Ass'n v. City of Berkeley

 

2024年に、バークレー市はガス禁止条例を撤廃。

 

その代わり、天然ガスの使用に応じた新たな税金を課す方向へと動いているようです。

 

こうしたバークレー市の動きも住民投票などで電化の方向に動いており、他のベイエリア地域でもガス使用を制限するところが増えつつあります。

 

2. いつから電化が始まる?

 

では、一体いつから、どの地域から電化が始まるのでしょうか?

 

アメリカでは、法律が、連邦、州、郡、市町村単位の条例というふうに各管轄で異なる場合が多いため、各管轄別にみてみましょう。

 

<カリフォルニア州全体の電化の動き>

カリフォルニア州では、2030年をめどに、一般住宅と商業物件の建物の電化をめざしています。

 

2030年から、ガス式の給湯器やヒーターの販売が禁止されるため、古い給湯器やヒーターの交換時に、電気式に切り替えなければならなくなります。

 

現段階では、ガスレンジやガス式洗濯乾燥機は州レベルの禁止リストには入っていません。

 

また、ガス式の給湯器やヒーターの使用を禁止するわけではないので、現在使用中の機器類はそのまま使用しても問題ありません。

 

さらに、ガス式給湯器やヒーターの修理まで禁止しているわけではないため、故障した場合は業者に修理してもらえます。

 

ただし、2030年以降はこうしたガス式製品の部品販売も法律上は販売禁止になるので、業者の修理で部品が手に入らないといった問題がおこる可能性があります。

 

<ベイエリアの電化の動き>

現在のところ、サンタクララ郡、アラメダ郡、サンマテオ郡をはじめとした9つのベイエリアの郡(コントラコスト郡、マリン郡、ナパ郡、ソノマ郡、ソラノ郡、サンフランシスコ郡)で、2027年から住宅用ガス給湯器の販売も設置も禁止される予定です。

Frequently Asked Questions – About Air District Appliance Rules

 

75,000 BTU/hr以下の給湯器が禁止対象となります。

 

通常、家族4人用の一軒家のガス式タンク給湯器は40,000~50,000 BTU/hrの40-50 ガロンタンクなので、主にこうした一般住宅用のガスタンク給湯器の販売禁止を目的としています。

 

商業用の大きな75,000 BTU/hr以上のガス給湯器は、もう少し遅く2031年をめどに販売禁止のようです。

 

こちらの法律も、現在問題なく作動しているガス製品は使用し続けることができます。

 

また、緊急にガス式製品の修理が必要な場合や、経済的に電気式に全面取り換えが難しい家庭などは、この法律の対象外となるようです。

 

ガス式ヒーターの販売禁止はこの9つの郡で2029年1月1日から施行される予定です。

 

<シリコンバレー主要都市の電化の動き>

シリコンバレー各市は、上記の各郡や州の規制に従いながら、各市独自の優遇策やルールを定めています。

 

基本的には、どの市も郡や州の規制通り、新築物件はすべて電化を求めています。

 

パーミット(建築・設置許可)を市に申請するリモデルの場合も、同様に電気仕様の家電製品に取り替えることが推奨されています。

 

そして電化をできるだけ促進するため、各市では、下記のようなリベート(補助金)プログラムを提供しています。

 

 

Silicon Valley Clean Energy地域(ロスアルトス、ロスガトス、マウンテンヴュー、サニーベール、サラトガ、キャンベル、クパティーノ)

  • ガス式ヒーターをヒートポンプ式に交換:$2500~3500のリベート
  • ガス式給湯器をヒートポンプ式に交換:$2000~3000のリベート
  • 電気パネルなどをアップブレード:$2000~3000のリベート

https://svcleanenergy.org/home-rebates/

 

パロアルト(パルアルトは、市が電気ガスを供給しているため、市独自のリベートプログラム)

  • ガス式ヒーターをヒートポンプ式に交換:$2500のリベート
  • ガス式給湯器をヒートポンプ式に交換:$3500のリベート

City of Palo Alto Utilities Rebate Hub

 

サンノゼ(San José Clean Energy (SJCE) とPG&Eのリベートプログラム)

  • ガス式ヒーターをヒートポンプ式に交換:$1500のリベート
  • ガス式給湯器をヒートポンプ式に交換:$2000のリベート

San José Clean Energy EcoHome Rebate

 

サンタクララ市(市独自の電気供給会社Silicon Valley Powerで安価な電気供給をしている。)

  • ガス式ヒーターをヒートポンプ式に交換:$10,000のリベートが1/31/2026で終了。現在保留中。
  • ガス式給湯器をヒートポンプ式に交換:$5500のリベート

https://www.siliconvalleypower.com/residents/rebates 

 

これらの条例やリベートプログラムは、今後変更する可能性がありますので、最新の情報を確認されてくださいね。

 

 

 

 

3.どんな電化製品と交換?

電化の対象となるのは、主に給湯器とヒーターで、市町村によってはガスレンジも電化しようという動きもでてきています。

 

では、ガス式から普通の電気式給湯器やヒーターになるのでしょうか。

 

ここで、推奨されているのがヒートポンプ式電化製品です。

 

ヒートポンプとは一体何でしょうか?

 

ヒートポンプというのは、大気中の熱を汲み上げ、熱エネルギーに転換する仕組みです。

 

簡単に言えば、『エアコン』や『冷蔵庫』が冷却する仕組みと同じです。

 

日本ではすでに冷暖房両用エアコンがまさにこのヒートポンプで作動しています。

 

外気の熱を吸熱し、室内に移動させて放出することで暖房や給湯機の熱源になり、また、その逆に室内の熱を室外機へ移動排出し、室内を冷却する冷房にもなります。

 

電気でコンプレッサーを動かして熱を「取り込む」技術なので、電気で直接熱を作るヒーター(電熱線)よりも、少ない電力で多くの熱エネルギーを生み出せるのが特徴です。

 

消費電力量は約1/3と、電気ヒーターと比較して非常に高いエネルギー効率なので、電気代も節約になるとされています。

 

ヒートポンプは、外気温が極端に低くなる地域や急激な気温変化がある地域では、効率が低下すると言われています。

 

しかし、比較的温暖で気温の急激な変化が少ないカリフォルニアには最適なシステムのため、今後はヒートポンプ式家電製品への移行が進んでいくと思われます。

 

 

 

4.ガス vs 電気 (ヒートポンプ)、メリットとデメリットは?

 

では、ガス式よりヒートポンプなどの電化製品の方がエネルギー効率や環境にやさしいだけでなく、すべてに優れているのでしょうか?

ここで、そのメリット、デメリットをみてみましょう。

 

<ガス式家電製品>

メリット:

  • すぐに加熱、給湯、暖房ができる。
  • 停電になっても使用可能。
  • 特にガスレンジは料理の火加減が見え、調節できる、とガスレンジの人気は高い。

デメリット:

  • 空気や環境によくない。
  • 安全面ではヒートポンプなどに劣る。

 

<ヒートポンプ式家電製品>

メリット:

  • エネルギー効率がよい。
  • 環境にやさしい。
  • 安全性が高い。
  • メンテナンスが楽。

デメリット:

  • 設置の初期費用が高い。
  • 電気パネル等のシステムアップグレードが必要になるかもしれず、総合的に費用がかさむ。
  • 給湯器のお湯が温まるのに時間がかかる。タンクのお湯を使い切ってしまうと、新しいお湯が温まるまで時間がかかる。
  • タンクレス給湯器でも、お湯が設定温度になる立ち上がり時間が長くなり、お湯の勢いや温度の安定性が劣る場合がある。

ただ、こうしたデメリットもヒートポンプ技術の向上で、徐々に差が縮まっていくと言われています。

 

 

<インダクションレンジ(Induction Range)>

また電気式レンジの代わりにインダクションレンジ(Induction Range)という、電磁誘導加熱(IH)を利用し磁気で加熱するクックトップも推奨されています。

メリット:

  • 磁気対応の鍋を置かない限り表面が熱くならず、余熱も残らないので、やけどや火災のリスクが少なく安全性が高い。
  • 鍋を直接加熱するため、ガスや電気式に比べて加熱スピードが速い。
  • 表面が一面板なので、掃除が楽。
  • ガスコンロ以上に繊細で安定した火加減が可能。

デメリット:

  • 磁気対応の専用鍋やフライパンが必要。
  • 電気やガス式に比べ、インダクションレンジ本体の価格が高い。
  • 電気対応にするための電気パネルなどの容量を上げる必要がある場合もある。

 

ヒートポンプ式やインダクションレンジは、まだ導入するには高価だったり、設置のための電気容量のアップグレードが必要になったり、と費用がかかる可能性が高いですが、こうしたデメリットも今後、広く普及していくことで、調整されるかもしれません。

 

 

結論

 

地球温暖化による異常気象が無視できなっている今、環境問題に敏感なカリフォルニア、特にシリコンバレーでは、積極的に大気汚染を防ぎ、消費電力の節約する方へ向けて動いています。

 

家電製品の買換えを考えている方、リモデルや家の売却を考えている方、あるいは購入のための家探しをしている方も、各地域の最新情報を確認され、リベートプログラムを利用するなど、電化の波を賢く乗り切って下さいね。

 

 

 

<引用・参考文献記事・データ・画像>

The  Bay Area Air Quality Management District (BAAQMD)

 

カリフォルニア州「2025年エネルギーコード(2026年1月施行)」

California’s Energy Code Update Guides the Construction of Cleaner, Healthier Buildings (California Energy Commission)

 

 

 

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